キリ番777、古見さんのリクエスト。
リクエスト内容。
ビックリマンで聖フェニックス様であればなんでも良い。
いろいろと考え、ハピラキ見て幾つか候補上げて結局ここに戻って来ました。
大教典も見ましたが、もう自分の世界ビックリマンで行きました。
アニメ・シールゴッチャです。
で、今回は前編。
後編(だと思う…)は来週。
古見さんだけ、お持ち帰りOKです(て云うか、いります?)
タイトルはまたも日本語で考えて独逸語に。
結構王道ですかね?
キリ番1200のえふぁにうす様
遅くなりましたが、ありがとうございます。
リクエストがハピラキの聖フェニックス様と一本釣帝。
う~ん、それぞれで書いている割りにはこの二人だけの話は初めてです。
一本釣の方言が曲者ですが(土佐弁…)、頑張ってみます。
Ein geheimer Garten 前編
大きなお城。
その中の広い一室。
様々な書物が所狭しとある箇所は整理され、ある箇所は乱雑に積まれていた。
陽の光を好まぬ書庫。
それ故、部屋の中は薄暗かった。
そんな部屋に一条の光が差し込む。
一条の光が差し込む場所に、小さな影が時々動いていた。
と、その時。
書庫の扉が大きく広く響かせてきた。
「聖フェニックス!!」
「―――!?」
扉が開くと同時に響いた声に、小さな影が一瞬ビクついた。
「あっ・・・シャーマンカーン様・・・」
「聖フェニックス!」
小さな影は扉を開け、自分の名前を叫びながら近づいて来る天使(人物)、シャーマンカーンの名を呟いた。
「またこんな所に入り込んで…」
「すいません…でも!」
小さな影、聖フェニックスはゆっくりとその場から立ち上がり、シャーマンカーンに謝罪する。
「でもも、何もないわ!」
それでもシャーマンカーンはかなり怒っているらしく、聖フェニックスを更に叱り付けた。
「でも、シャーマンカーン、少しは…」
叱られる聖フェニックスを庇うような声がシャーマンカーンの背後から聞こえてくる。
だが、その声に対してもシャーマンカーンの声は変わらなかった。
「これが少しか!!」
「え~と・・・」
どうやら聖フェニックスが書庫に篭るのは、少しと云う範囲を超えているらしかった。
「毎日毎日こんな薄暗い書庫に篭りおって!」
「それは、お前と同じじゃないか?」
背後にいる声が叱っているシャーマンカーンの日頃の行動を指摘する。
「わしは良いんじゃ。だが、聖フェニックスは違う。子供は外だ!」
「でも、私は…」
「聖フェニックス!!」
「―――!?」
シャーマンカーンの言葉に反論しようする聖フェニックスだが、その前に封じ込めれてしまう。
シャーマンカーンは少し落ち着く感じに小さく息を吐く。
「お前がここに、この書庫に来る理由はよく分かる。お前は新しい世界、次界の創造主としての役目がある。その為にここにきて次界に関する知識等を求め、得ようとしている事を」
「だったら別に良いじゃない?」
「黙れ! スーパーゼウス!!」
「オッ!?」
背後からの声、スーパーゼウスに一喝入れる。
「子育てはお前で一度失敗しておるからのぉ…」
「ひどぉ~い!!」
嘆くスーパーゼウスの声を無視し、シャーマンカーンは今度は大きく息を吐いた。
「聖フェニックス。知識は確かに必要だ。しかしそればかりで詰め込んでもどうにもならない。次界は遥か遠き地にある。過去に言い伝えを信じ、次界に向かった者も少なからずおる。だが、誰も次界に辿り着いたという話は一度も伝わってはこない」
「・・・」
「まったくの未知の世界じゃ。書物に書かれていない事もあるかも知れん」
「…そうかもしれません…」
「その為には知識以外の事も学ばねばならない」
「・・・はい」
力なく、聖フェニックスはシャーマンカーンの言葉に同意する。
「と云うわけで…」
「・・・えっ??」
いつの間に近づいてきたのか、シャーマンカーンは聖フェニックスをヒョイと持ち上げると、そのまま猫の仔でも運ぶように歩き出す。
「しゃ、シャーマンカーン様!?」
驚く聖フェニックス。
「何をしているのだ?」
事態が飲み込めないスーパーゼウス。
そんな二人に対してシャーマンカーンは一言。
「知識以外を必要なものじゃ」
そう云うと庭に続く扉を開けた。
「―――ッ!?」
今まで薄暗い場所にいたせいで、聖フェニックスは一瞬、目を閉じる。
と同時に浮遊感を感じ、次に瞬間地面に転んでいた。
「シャーマンカーン! お前何やってんの!!」
どうやらシャーマンカーンは聖フェニックスを思いっきり庭になげたらしい。
地面は毛足が長い芝生で覆われていて、思ったほど痛みはないが、それでも突然の出来事に聖フェニックスはその場で固まっていた。
今まで、このような扱いを受けた事がなかったのだ。
「今日は一日、ここで学ぶのだ」
「ここで?」
何をとは云わなかった。
広い庭。
いや、庭園である。
天聖界のトップであるスーパーゼウスの城の住人以外誰も入る事がない庭園。
城の住人は主のスーパーゼウス。
その育ての親、シャーマンカーン。
スーパーゼウスのお世話をしている天使のヴィーナス白雪。
そして、聖フェニックスの四人だけ。
城の周りには強力な結界が張ってあった。
「一人でゆっくりと自然の中にいる事も必要じゃ」
そう云うとシャーマンカーンは一呼吸おいて、ブツブツと蟹の泡のように文句を云うスーパーゼウスを引き摺って城の中へ入って行く。
後に残ったのは、扉の閉まる重い音と、広い庭園に一人放り出された聖フェニックスだけ。
「・・・今日・・・一日・・・ここで・・・」
聖フェニックスはぐるりと周りを見渡した。
時々訪れる庭先。
いつもは誰か、シャーマンカーンやスーパーゼウス、そしてヴィーナス白雪らと一緒に散歩などをするぐらいしか来た事がない場所。
そんな場所に自分一人である。
そのせいか、見慣れた庭のはずなのに妙に広く大きく感じていた。
たった四人しかいない城。
はたまにスーパーゼウスにお願いに天使やお守が来るくらいであったが、それでもそれは入り口付近での事。
彼らがここまで来る事はありえなかった。
「・・・はあ…」
一度深呼吸をして聖フェニックスは服についた埃を落としながら立ち上がる。
広い庭といっても、聖フェニックスが今いるのは、まだ入り口付近。
全体の広さに比べたら、ほんの一部にしか過ぎない。
彼の視線の先にはこの庭、庭園の九割は占めているであろう林。
と云うよりは、森が広がっていた。
いつも来るには自分がいま立っている付近だけ。
森にはまだ一度も、入った事はなかった。
もちろん、スーパーゼウスの力で悪魔など入り込む事はないのだ。
理力が弱い聖フェニックスが迷い込んでも何の問題はない。
「・・・」
後ろを振り返る。
自分が放り出された扉は固く閉ざされており、直ぐに開きそうにはない。
どうやら今日一日は、本当に陽が暮れない限り、城の中へは入れそうにはなった。
聖フェニックスは森を見つめた。
「次界は、誰も辿り着いたものがいない、未知の世界。シャーマンカーン様の仰られた通り、書物だけでは分からない事がたくさんあるでしょう。あの森と同じに…」
聖フェニックスは理力で聖十字棒を取さすと、森に向かって歩き始めた。
しかしその歩みは遅く、やがて止まってしまっていた。
直ぐ目の前に森への入り口がある。
しかし、一度止まってしまった足は中々動きだそうとはしなかった。
森の木々を見上げてふと、聖フェニックスはある事を思い出した。
この森で時々スーパーゼウスとヴィーナス白雪が鬼ごっことか、かくれんぼとかをしていた風景を。
それはとても楽しそうに二人は森で遊んでいたのだ。
もっとも、その後シャーマンカーンに、特にスーパーゼウスが怒られているのも何度も見かけていた。
そんな少し楽しい光景を思い出した聖フェニックスはクスリと笑みを浮かべた。
「大丈夫です。何も心配するようなことはないもないのですから」
左手に握っている聖十字棒を握り締める。
「行ってみましょう」
ひとつ小さく、いや大きく息を吐くと足を前に踏み出して森の中へと入っていったのだった。
続く
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