トロイメライ

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ボツ話、ここで終わりです。
次は、キリ話で、ビックリマン(の予定)

Melissa Act3 et



最近この付近にテロリスト集団がいるかも知れないと、エルゼが云っていた。
実際、エドワードたちがこの地に辿り着くまで、至るところでテロ行為が起こっていた。
それにエドワードもアルフォンスも、まだヴィントには自分の名前も、身分も一言も云っていない。
それなのにこんなに詳しく説明している。
これは何か裏でもあるもではないかと勘ぐりたくなってしまう。
しかしエドワードにいくら睨まれようが、不審がられようが、ヴィントの方は何とも思ってないらしく、軽い笑みを浮かべている。
アルフォンスはそんな二人の狭間に立って、ハラハラである。
「兄さん…」
「あんた…」
「…俺はただの自由人だよ」
「はあ？…」
なかなか口を開こうとしないヴィントの態度に痺れを切らしたエドワードが声を出そうとした時、やっと返事が返ってきた。
「それって…」
「まあ、この家の縁筋にはあたるけど、家系図が必要なくらいの感じかな？」
何ともあいまいな返事である。
「とても古い話だし、実際家系図見たって、叔父の従兄弟の姪のはとこのって感じで…」
ヴィントはお手上げ状態のように云う。
一般的に云って、地方でも大きな屋敷の親戚関係なんてこんなもんだろう。
「気ままにあっちこっちと旅をね。国内外問わずに。で、たまたまこの近くに来たのが四年前。まあいろいろと手伝ったりして、軍に連絡して、こんな感じで今に至る。とまあ云うわけですが、納得して頂けましたか、鋼の錬金術師、エドワード・エルリック殿？」
「―――！？」
「あんた…」
ヴィントはエドワードの名前、そして国家錬金術師である二つ名までも云ってきたのだ。
自分たちのことは何も知らないと高を括っていたエドワードだったが、最初から素性はバレバレだったのだ。
こうなるとエドワードはヴィントに対して更に警戒心を募らせる。
一方ヴィントはエドワードの警戒心を解くためか？
優しい笑みを浮かべていた。
「確か二年前だったかな？　北のノルデンって町で、君たち大立回り、やっていたよね？」
「二年前？」
「………あっ」
二年前…
賢者の石探しでそれらしい石があるという噂で立ち寄った北部の町、ノルデン。
結果、いつものごとく空振りに終わった。
目的の石がないのなら、いつまでもこの町にいる必要なない。
だが石探しの途中であるトラブルに巻き込まれてしまったのだが…
「ヴィントさんもあの町にいらしてたんですが？」
「うん、あの町の近くにちょっと野暮用あって、たまたま通ったんだけど、おもしろいもの見せてもらったよ！」
「…はあ」
ヴィントは楽しそうに二年前の事を話すその側で、アルフォンスはその時の事を思い出して化、申し訳なさそうに返事をする。
大立回りの主役であったエドワードはと云うと、二人の会話からは置いてきぼり状態。
完全に不貞腐れてしまっていた。
「おい…」
「あの…」
「何？」
エドワードがヴィントに声を掛けても、彼の近くにいるアルフォンスの声に先に反応する。
「あの…ここにある本は…」
「あっ！？」
エドワードも気になっていた事。
医学関係に錬金術の本があるのならば、何かしらの情報もあるのではないかと。
「ここに残っている本は、ありふれた基本書や入門書ばかりだよ。重要な本はクレタに持って行ったし、それ以外の専門書のような文献とか記録関係は、さっき話した通り軍が運び出してしまったから、ウエストシティかセントラルの図書館にあると思うけど。そこに行けば見たり読んだりする事が出来ると思うけど。まあ、国家錬金術師ならほぼノーチェックじゃないかな？」
「そうですか！」
アルフォンスは明るい声を出すとエドワードに方に振り向いた。
心なしか表情のないアルフォンスの鎧の顔が、何だか嬉しそうに見える。
それを見たエドワードは自然に笑みが浮かんでいた。
次の目的地も必然的に決まってきた。
「おい！」
「何？」
やっとエドワードの問いに声が返ってきた。
「ここはオルギエなのか？」
「そうだよ。と云っても端っこの方だけど」
「はじぃ！？」
ヴィントは地面に簡単な付近の地図を書く。
「ここが現在位置。でここが…」
二人は地図の説明を聞き、自分たちが途中から道を間違えていた事をやっと理解した。
ついでにオルギエの中心に行く道も教えてもらう。
探している石ではないとは云え、やはり気になる。
会いたい人に会える石という話に、エドワードもアルフォンスも心惹かれるものを感じていたのだ。
「あの～」
「………？」
アルフォンスが再び訊ね始めた。
「あの～さっき、お祭りの日について違うって話をしていましたが、それってどうゆう意味ですか？　精霊とかと関係あるのですか？」
「アル………」
アルフォンスにしてみれば、ここに辿り着いたのは精霊のおかげだと云っていた節があった。
その祭りと精霊が関係しているなら、多少なりとも気になるのだろう。
一方、精霊なんかまったく信じていないエドワードではあるが、最初に会った時にわざわざ祭りの日にちのズレの事を云っていたのは何だか引っかかってはいた。
テロリスト達の暗号かそれともテロ予告か？
そう思ったのだが、今となってはヴィントにはエドワードの正体はとっくにばれていたのだ。
「祭りは四年に一度、新月の夜」
「いつもですか？」
「さあ…俺は参加した事ないから知らないけど……確かその日に門が開くとか閉まるとか…だからその日に祭りを行うって云っていたけど…」
｢門っ！？｣
ヴィントが云った一つの単語に二人は顔を見合わせた。
二人にとっての門とは、あの時、人体錬成を行った時に見た真理の扉を意味する。
まさかその扉がヴィントの云う門だとは到底思えない。
しかし今のエドワードとアルフォンスには、元も身体に戻るためどんな些細な情報だろうが、デマと云われようが、一つ一つ当たってきた。
今回は意外な情報が次々と入ってきて正直、どこかで繋がっているのではないかとさえ思ってしまう。
「この間、連絡が来て今年がその年で、三日だったか四日だったかな？」
「その連絡。誰からなんだ？」
エドワードが聞いてくる。
ヴィントは別に慌てることもなく、静かに答えた。
「クレタからだ」
「クレタ？　なぜクレタなんだ？」
「祭りの日は空の動きと関係あるらしいから。ここ、アメストリアよりクレタの方が天文学、進んでいるらしいのと、言い伝えなんかも入っているらしいとか。いろいろあるみたいだけどね」
ヴィントの説明は当事者ではなく第三者的に感じる。
エドワードは他にもいろいろと聞いてみたいのだが、ヴィントの態度に対してどうしても不信感を抱いてしまう。
アルフォンスの方にはそんな様子はまったくなく、ヴィントに対しては楽しそうに嬉しそうな声を感じさせていた。
「兄さん！　家の中、見てもいいって！」
「えっ！？」
エドワードとしてはとっととオルギエに行きたいのだが、屋敷に残っている書物も見てみたいと云う気持ちも多少はあった。
しかし本を見て、それからオルギエに向かうとなると、時間的に宿に戻るのは完全に夜になってしまう。
本当に今回はついていない。
「家の中へ入る、と云うより、泊まっていった方が良いかもな？」
「ヘッ？」
「はぁ？」
ヴィントの突然の申し出に二人は一瞬、何の事か判らず素っ頓狂な声を出してしまった。
「君達、オルギエに行きたいのだろう？」
当たり前だと云う表情のエドワード。
それが本来の目的なのだから。
しかし蔵書も気になる…
「今から家の中を見て直ぐ通り抜けなんて、君たち出来そうにないし。その後、村の中心へ行ってフォーリエに戻るのなら、完全に夜、だよ？」
「………」
「それでなくても最近この辺り、物騒な連中が出没しているって云うウワサだし…村に無理して戻るよりここで泊まっていくと良いよ」
「でも…」
「見ての通り、屋敷は大きいけどいるのは俺一人だから別に気にする必要もないし？」
「兄さん…」
「………」
ヴィントの申し出はエドワードにとっては、正直ありがたい話ではあった。
貴重な文献や資料はクレタやウエストシティ、セントラルに運ばれているとは云え、もしかしたら取りこぼしでまだこの屋敷のどこかに眠っているのかもしれない。
そしてエドワードにとってここに泊まれるのなら、ロイと顔をあわせなくて済む。
何よりもそれが一番かもしれない。
「…決めた！」
「…にい…さん？」
「今日はここに泊まる！　良いだろう、アル？」
エドワードは満面の笑みを浮かべてアルフォンスに云う。
「ダメだよ！　兄さん…」
「どうして？」
「兄さん…大佐達はどうするの？」
アルフォンスの言葉にヴィントは、今までのにこやかなだった笑顔が、一瞬消える。
その事にエドワードもアルフォンスも気づいたが、すでに国家錬金術師であることはバレている。
今更取り繕う気は更々なかった。
が、いつものように二人で旅をしてこの村に来たのだが、そこにはなにやら訳ありで軍部の方々がそれなりの人数でいたのだ。
それに何だか訳も判らずエドワードは大佐、ロイの恋人にされてしまった。
軍属であるエドワードに、もしかしたら急な参加命令が出ているかもしれないとアルフォンスは思ったのだ。
「大丈夫、大丈夫！　何もありはしないって！　あるなら昨日のうちに云って来ているって！」
だが軍属であるエドワードの方はと云うと、例え命令が出ていようが最初から無視する構えでいた。
「でも、昨日の大佐…困っていたから兄さんの事を…」
久しぶりに会ったのに、ロイにはいつの間にか婚約者の女がいた。
自分にそれまで云っていた事は一体なんだったのかと思った矢先、今度は自分が婚約者に成らされていたのだ。
多分任務なんだろうとエドワードは思うのだが、今まだのロイの態度の事を思い返すと、どうしても納得がいかないのだ。
「自業自得だろう。オレには関係！」
「でも…」
それでも云ってくるアルフォンスを交わそうという狙いなのか、二人の会話を聞いているだけだったヴィントに声をかけた。
「と、云う事で、よろしくな！」